【小説を読もう!】極星から零れた少女/七沢またり著
個人的にお勧めの「小説を読もう!」作品。
極星から零れた少女/七沢またり著
親戚に騙され借金で首が回らなくなった両親は、10歳のステラ(主人公)を道連れに無理心中を図る。
母親に首をしめられ気を失ったステラは、目覚めた時、魂の記憶を取り戻す。
魂の記憶とは停滞と退屈に苛まれながら、人間を見守もっていた長い日々のこと。
退屈な日々の中で、ステラはずっと刹那的に生きる人間に憧れていた。
記憶を取り戻したステラは、両親の遺体を前にして悲しむよりも「人生を10年も無駄に過ごしてしまった」と嘆く。
弱い者は搾取され、強い者が甘い汁を吸う糞みたいな町で、ステラは人間であることを楽しみながら生きていく。
この著者が描く主人公は不思議な魅力があるのだが、この物語のステラも同じ。
ナウシカのように優しく正義感がある人物ではなく、バカに容赦なく、弱者にも冷徹な目を向ける。
魔術が使えるところはチートなのかもしれないが、虚弱だし、なにより”前の”ステラに引きずられてトラウマを抱えたり、歳相応に感情のコントロールが出来なくなる。
怪しい儲け話に飛びついた父親も悪いと言いながらも、父親を侮辱されると腹を立てたり、父親の残した小さな雑貨店に執着したりする。
冷酷無比な人間かというと、そんなこともなく(かといって優しくもない)、複雑な性格が魅力的な主人公。
この作品を読んだ最初の感想が「この人文章うまいな。プロになれんじゃないの」だった。
あとで知ったのだが、すでに作品がいくつも書籍化されている方だった。
この作品はまだ書籍化されていないが、「死神を食べた少女」とか「火輪を抱いた少女」とか出版されているので、ご存知のかたも多いと思う。
どの作品もとてもおもしろいのでお勧め(書籍化された作品も”小説を読もう!”に公開されている)。
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