猫と英語と後鼻漏

中学英語から独学で学び、現在、英検1級挑戦中。テキストの紹介や後鼻漏の話などをしています。読書や映画の話なども。

【読書】現代の戦争被害ーソマリアからイラクへー/小池政行著

現代の戦争被害ーソマリアからイラクへー/小池政行著

”なぜ民間人の犠牲者が増えつづけるのか?”

本の帯から引用

本の帯に書いてあるように、戦争による民間人の犠牲について書かれている本。

民間人の犠牲が増え続ける理由や、本書に掲載されている戦争の経緯などが分かりやすく書いてあり、文章も読みやすかった。

目次

第1章 戦争にもルールがある

第2章 転機としてのソマリア内戦

第3章 ボスニア・ヘルツェゴビナ民族浄化

第4章 コソボ紛争と人道的介入

第5章 テロへの先制攻撃ーアフガニスタン

第6章 イラク戦争ー米国による先行的自衛権の行使

目次から分かるように、ほとんどアメリカが軍事的に、そして主体的に関わっている戦争について書かれている本。

まず最初に思ったのが「アメリカって軍事行動多いな」ってこと。

アメリカが行っている、または関わっている軍事行動のニュースを見るが、やっぱり誤爆が原因で民間人が死傷するなどのニュースは少なくない。

空爆による誤爆で、民間人が犠牲になっていることが多い気がしていたが、この本を読んで何故アメリカが空爆を多用するのかを理解した。

自国兵士の犠牲をゼロに近づけるための方法が、空からの攻撃のようだ。

アメリカが空爆を多用するようになったきっかけは、ソマリア内戦。

映画にもなったので、知っている人も多いと思うが、アメリカを中心とした多国籍軍ソマリアに派遣され、そこで米軍兵士の遺体が冒涜され、アメリカのお茶の間にその映像が流れ、クリントン大統領と、国防長官、国務長官は議会で非難を受けた。

個人的には「なんで自国の兵士をよその国の内戦で死なせているのか」と思うが、内戦がひどすぎて、飢餓が発生し人道的介入が必要と判断されたからだそうだ。

無辜の市民が飢え死んでいる、という状況をなんとかしなければいけないという目的の他にも、アメリカにはアメリカの、そして国連にも国連の思惑があって、多国籍軍が派遣され、アイディード将軍派の幹部を拘束するという作戦を実行したらしいが、政治の思惑で兵隊が死んでいるようにしか、自分には見えなかった。

 

第1章の「戦争にもルールがある」は、すごく勉強になった。

第1章は5つのパートで構成されている。

1 ジュネーブ条約違反
2 国際人道法
3 国連憲章が許す戦争とは
4 戦争犯罪人を裁く国際法
5 常設的な国際戦争法定ー国際刑事裁判所

知っているようで知らない、分かってるようで分かっていない、戦争のルールを知ることが出来た。

”国際人道法は、時の国際政治ないしは国内政治の情勢にかかわらず、現実に存在し続ける戦争がもたらす苦痛を制限しようとするものである。このように考えれば、国際人道法とは人道思想を法的に表わしたものに過ぎないと言える。しかし、国際人道法が国際法であることは極めて重要である。戦時において非人道的行為を禁止し、人間の命の尊重を国際的な義務としたことは、少なくともそうでありたいという意思が各国にあることを示している。”

本書の第1章から引用。

「戦争は殺し合いだから、そんな時に人道とか、そんな余裕ないから」とか言われそうだけど、戦争のルールを決めないと、誤爆して民間人が犠牲になっても「可哀想だけど、戦争だから仕方がないね」で終わってしまうし、捕虜が殺されても「戦争だから仕方ないよね」という考えが当たり前になってしまう。

そんなことにならないようにと、各国がこの国際人道法の中心をなす、ジュネーブ条約に加入しているのだ。

国際社会が「戦争にもルールがある、戦争犯罪を裁く」という意思を表明し続けることが、重要だと本書から教えてもらった。

関連動画として、国際刑事裁判所の動画をリンクしておく。

リンク先:BBC News Japanの公式チャンネル

www.youtube.com