【読書】閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済/水野和夫著
閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済/水野和夫著
2017年発行された本書は、資本主義の未来とポスト近代について書かれている。
目次
はじめに 「閉じてゆく」時代のために
第一章 「国民国家」では乗り越えられない「歴史の危機」
第二章 例外状況の日常化と近代の逆説
第三章 生き残るのは「閉じた帝国」
第四章 ゼロ金利国・日独の分岐点と中国の帝国化
第五章 「無限空間」の消滅がもたらす「新中世」
第六章 日本の決断ー近代システムとゆっくり手を切るために
おわりに 茶番劇を終わらせろ
前作の”資本主義の終焉と歴史の危機(2014発行)”を読んでから本書を読んだので、すんなりと内容を理解することができた。
著者は、資本主義と国民国家との両立は困難な時期にきており、その理由を本書の中で述べている。
前作と同様、利子率の歴史が重要と記している。
以下、本書から引用
”なにゆえ利子率の歴史が重要かといえば、長期金利は資本利潤率の近似値であるからです。利子率=利潤率が2.0%を下回った状態では、資本を投下しても利潤を獲得することはできません”
人件費を企業が削り続けている理由は「ここにあったんだ」と、この本を読んで納得した。
人件費を削ると、所得が下がって、納める税金も減って、消費も落ち、企業は儲からないのに、なんで人件費を下げ続けるのかと思っていた。
「人件費を安くしないと国際競争力がつかないから」とか、聞かされてきたけど、他の国と比べてみると日本のように賃金が下がり続けている国は珍しいみたいだし、賃金が下がり続けているからと言って、国際競争力がついている感じもしない。
「なんのために賃金を下げ続けているの?」と疑問に感じていたが、この本を読んで納得した。
利潤が確保できないから、それを補うために人件費を削ってるんだと疑問が解消された。
この本は中世から近代、近代からポスト近代へと経済と社会体制がどう変化してきたか、また変化していくのかということを書いている。
個人的な感想だけど、ポスト近代について書かれている内容はちょっと想像がつかない世界だった。
本書のタイトルにもある「閉じた帝国」というのが、ポスト近代の世界なんだけど、イメージがわかない。
まあ、帝国やら王国があった時代には、中小の国民国家が出来る世界の方がよっぽど想像出来なかっただろうけれども…
EUのように、ゆるやかな地域連合体を作るプロセスを経るらしい。
なぜ「閉じた帝国」がポスト近代の姿なのか本書に理由が書いてあり、納得できる部分も多い。
しかし、今の日本を含むアジア諸国の動き、アメリカの「覇権は誰にも渡さないぞ」的な世界大戦以降続く姿勢を見ていると、「そんな世界来るのかな?」という気持ちになる。
まあ、社会体制が変わるのに200年くらいかかるらしいし、何度もバックラッシュをおこしながら変わってゆくのだろう。
少なくとも、今の社会体制のままいったら、数十年前のように戦争が起きてもおかしくないと個人的に思っている。