黙って働き笑って納税 戦時国策スローガン傑作100選/里中哲彦著【読書】
黙って働き笑って納税 戦時国策スローガン傑作100選/里中哲彦著
本書はおもに昭和8年から昭和18年までのスローガンが収載されている。
昭和8年は国際連盟から脱退した年で、昭和18年はガダルカナル島の撤退や、アッツ島守備隊玉砕の年。
著者は本書に載っているスローガンについて、こう書いている。
”これらは、当時の「時代の空気」を生なましく伝えるものとして、昭和史の貴重な資料ということもできよう。”(本書の”おわりに”から引用)
本書に載っている戦時下のスローガンと、ミニコラム(スローガンごとに時代背景などを説明している)を読むと、戦中の暮らしがいかに大変だったか分かる。
例えば昭和16年のスローガン”任務は重く 命は軽く”とか、どんな気持ちで当時の人たちは、このスローガンを読んだのだろうかと考えさせられる。
身内を戦地へ送った人たちの気持ちを想像してみると、当時の空気はそうとう残酷だと感じる。
ちなみに昭和16年は真珠湾攻撃の年。
あと”粗衣で頑張れ 粗食でねばれ”とか庶民が着る物や食べ物に困ってる様子が目に浮かぶ。
これも昭和16年のスローガン。
昭和15年のスローガン”屑も俺等も七生報国”は”屑も俺等も”のところが非常にひっかかるスローガン。
(「七生報国」とは七たび生まれかわっても、国のために報いるという意味)
昭和15年は日独伊三国同盟を締結した年。
本書の最後に、年表と出典が載っている。
特に年表が興味深く、昭和15年3月に内務省が「敵性語追放」に着手し、外国風の芸名をつけている芸能人に改名要請をしたとか、昭和16年5月に「肉なし日」が実施されたとか載っている。
この本に載っている国策スローガンを読んでいると、まるで遠い国の話のように感じるが、自分のじいちゃん、ばあちゃんはこのスローガンを読んでた世代なんだよね…そう考えると昭和前期を近くに感じる。
もう中古しかないみたいだけど、戦時国策スローガンに興味のある人にはいいかもしれない。